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7.カフェーの巻き
今回はイタリアのコーヒーの話です。コーヒーはイタリア語では「caffe'」。”カフェー”あるいは”カフェッ”のように最後の”エ”にアクセントが置かれます。
こちらに来てすぐに気付いたことは皆さんよくコーヒーを飲むということです。朝食に1杯。オフィスに到着したら同僚を誘って1杯。10時半くらいにオフィスの皆と1杯。昼食後に1杯。夕方5時前後にもう1杯。そして夕食後。もちろん皆が皆、1日6杯飲むわけではありませんが、それでも1日4杯くらいの人が多いように思われます。そんなに飲んだら胃に良くないのではないかと心配してしまいますが、イタリアでは消化を助けてくれる胃に優しい飲み物だそうです。対してお茶が飲まれることは少ないようです。お店に行けば紅茶やハーブティーのティーバッグを買うことはできますが、お湯を沸かすやかんを見つけることは難しく、電気を使った沸騰ポットもイギリスに行った際に買い求めると良いとか。
イタリア人がこれだけ飲むカフェーです。コーヒー嫌いの人もイタリア旅行の際には是非バールに立ち寄ってカフェーを飲んでみてください。バールにはたくさんの種類のコーヒーが用意されています。一つ一つ紹介していきましょう。
ご存知のようにイタリアのコーヒーといえば”エスプレッソ”(写真左)。日本で普段飲んでいるコーヒーに比べてとても濃く苦いコーヒーです。違いはコーヒーの入れ方にあります。イタリア式は、挽いたコーヒー豆に圧力をかけてお湯を通します。そのおかげで少量のお湯でエキスを抽出することができます。バールやレストランなどのお店で使っている機械では、なんと約10気圧もの圧力をかけてコーヒーを入れます。この大きな圧力により、単に少ない量のお湯でエキスを抽出するのではなく、細胞壁を壊して、細胞の中からコーヒーエキスを抽出することができるのだそうです(友人談)。細胞壁うんぬんの真偽は不明ですが、約10気圧かけるのは本当で、これがあのトロッとして泡だったコーヒーを入れることを可能にしています。このエスプレッソが基本で、注文する時は、わざわざエスプレッソと言わなくてもカフェーと言えばエスプレッソが出てきます。我がトリエステでは”ネーロ”(黒)と呼びます。イタリアの他の地方で「ネーロ」を頼むと、グラス一杯の赤ワインが出てくることもあるとか。
まずはこれに砂糖をたっぷりと入れて飲みましょう。砂糖を入れるべきか入れずに飲むかは意見の分かれるところです。砂糖を入れている人の方が多いようですが、コーヒーの本当の味を味わおうと思ったらやはり砂糖無しでしょう。最初は苦すぎて味が分からないのですが、2,3日で慣れて味わえるようになります。もう一つ砂糖無しを選ぶ理由としては、砂糖を入れてかき回すとエスプレッソ特有の泡がほとんどなくなってしまうからです。
バールには砂糖と共に必ず牛乳が置いてあります。甘すぎるのも苦すぎるのも嫌いな人は牛乳を少し入れて飲むのも良い方法です。
さて、それではイタリアでは何故こんなに濃く苦いコーヒーを飲むようになったのでしょう。その答えは、コーヒーがおいしくなかったから。コーヒーがヨーロッパでよく飲まれるようになった頃イタリアは貧しく、おいしいコーヒー豆はオランダなどのお金持ちの国に取られて、イタリアはあまりおいしくないコーヒー豆しか買えなかったのだそうです。そのおいしくないコーヒー豆から如何においしいコーヒーを作るか知恵を絞った末、今日のような圧力をかけて濃いコーヒーを作る方法が考え出されたそうです。
エスプレッソが濃すぎると思う人には”ルーンゴ(長い)”があります。これはエスプレッソより約2倍のお湯を通して入れられます。コーヒーエキスは一気に出てしまうので、エスプレッソをお湯で薄めた感じです。
逆にエスプレッソよりもっと濃いコーヒーを飲みたい人は”ドッピオ(ダブル)”と頼んでみましょう。普通の2倍のコーヒー豆にエスプレッソと同じ量か少し多めのお湯を通したコーヒーを作ってくれます。
バールのコーヒーメーカーには牛乳を温め泡立てる装置も付いています。この泡だった牛乳には甘みがあるので、冷たい牛乳を入れたのとはまた違う味を味わうことが出来ます。牛乳をどれだけ入れるかによって、たくさんの種類が作られています。
エスプレッソにカップが泡で一杯になるまで牛乳を加えたものが、”カフェマキャート”です。これをトリエステでは”カップッチーノ”と呼びます。しかも方言を使うと”カーポ”になります。さらにトリエステではこれをガラスのコップ(bicchiere)に入れたものが存在していて、”カーポ・イン・ビ”(in bicchiere)という名前がついています。中身はカーポ(カフェマキャート)とほぼ一緒ですが、見た目が良く人気です。特にイタリアの他の地域から来た人に人気があります。右の写真がカーポ・イン・ビ、きれいでしょ。
ふた周りほど大きなカップに一杯になるまで牛乳を加えたものがイタリア語で”カップッチーノ”(写真左)です。一番上にココアパウダーが振り掛けられていることがよくあります。これはバールで朝食をとる人が良く飲んでいるコーヒーです。トリエステではこれを”カフェラッテ”と呼びます。さらに牛乳を増やしたものが欲しい人には”ラッテマキャート”があります。これは大きなガラスのコップに入って出てきます。量も350ccくらいになり、かなりの量です。色も薄めで、コーヒー牛乳といった感じです。このラッテマキャートと同じようなコーヒーでガラスコップではなく大きなカップ(カップッチーノのカップより大きい)に入ったコーヒーを”カフェラッテ”として出してくれるバールもありますが、どのバールにもあるとは限りません。イタリアでは”カフェラッテ”は家で飲む牛乳のたくさん入ったコーヒーに対して主に使われる言葉のようです。
カッフェとお湯を頼んで薄めて飲んでいる人もいますし、”スペシャルカーポ・イン・ビ”なんていうココアのふりかかったものがあったり、人それぞれの飲み方があり奥が深いです。ここまでたくさん説明してきましたが、強調したいことはIllyなどたくさんのコーヒー会社のあるトリエステですが、「カフェーに関してはトリエステは他のイタリアとは違う!」ということです。トリエステに来た際には気を付けてください
値段のことを言うと、エスプレッソ、ルーンゴ、カフェマキャートは同じ値段です。値段は法律で決められているのでしょうか、どのバールでも80セントです。使っている豆は店によって違い、どのブランドの豆を使っているかは看板に表示されています。不思議なことはIllyの豆とLavazzaなど他のメーカーの豆の値段は明らかに違うはず(食料品店ではIllyの豆の方が2倍高い)なのですが、バールのコーヒーの値段は一緒です。つまりIllyの看板の出ているバールで飲むほうがお得ということになります。
さて
イタリアの朝はコーヒーで始まります。牛乳をたっぷり入れたコーヒー”カフェラッテ”に甘いパンかビスケットが代表的なイタリアの朝食です。朝食をバールで取る人もけっこういますが、家で取る人の方がやはり多く、家では自分でコーヒーを入れます。右写真は家でコーヒーを入れるときに使われる道具で、”モーカ”と呼ばれます。下の部屋に水を入れて、その上の部屋に挽いたコーヒー豆を入れて火にかけます。沸騰して水を入れた部屋の圧力が上がると、その力でお湯が持ち上げられ、コーヒー豆の中を通り、フィルターで仕切られた1番上の部屋に出来たコーヒーが溜まります。これも圧力をかけてエキスを抽出して一気にコーヒーを作ります。ただしお店の機械ほど大きな圧力はかけられないので、お店のコーヒーほどおいしいコーヒーは作れません。使われている豆は同じですが、はっきり言って味の差は歴然です。お店の機械の”家庭版”も2万円程度で売られていますが、使っている人はあまりいないようです。元々この機械は1日に100杯とか作るようなことを考えて作られているので、家庭で使っても故障ばかりでうまく働かないそうです。ということで、家ではモーカが一般的です。ビアガーデンで飲む生ビールの方がおいしいのは分かっていても、普段は家で缶ビールを飲むのと同じでしょうか。